行動指針は使い方を誤ると会社を刺します
(第16話)行動指針は使い方を誤ると会社を刺します
言行一致は人を呼び、言行不一致は危機を呼ぶ
- 儲からないことはしない
- 面白くないことはしない
- 面倒くさいことはしない
- 在庫になることはしない
- 利益の独り占めはしない
これは私の前の勤務先が経営理念というか、行動指針として掲げていたものです。
元々は社長が尊敬する別の経営者から教わったものでした。
私が転職する際にも、社長から
「ウチはこういう方針でやっています!」
と話をしてもらいましたし、会社概要にもこの5ヵ条が書いてありました。
このため、資金調達をするにあたって事業計画書を書く際にも、この行動指針を盛り込みました。
そして、ある日、旧知の個人投資家に出資をお願いするために訪問。
事業計画書を見せながら説明を始め、2ページの行動指針のところに来たところ、突然、
「こんなことを言う経営者じゃダメ」
とバッサリ。
結局、肝心の数字編を説明する前に出資の話は終わってしまいました。
先の行動指針、私自身はかなり気に入っていました。
「こういう会社になれたらいいなぁ」
と思っていたので、個人投資家の方がなぜダメ出しをしたのか、その時はよく分からなかったのです。
では、実際に前職の状況はどうだったのか?
残念ながらその個人投資家の人には出資を断られましたが、その後やや時間はかかったものの、銀行からの借入金5,000万円を含めて2億円を集めることができました。
そして、しばらくしてある大型のプロジェクトに着手することに。
しかし、そのプロジェクトに関して言えば
- 儲からないことはしない→採算的にはギリギリ
- 面白くないことはしない→上場会社の下請けで独自性が薄い
- 面倒くさいことはしない→関係先も多くその調整が複雑
- 在庫になることはしない→途中ではかなり在庫あり
- 利益の独り占めはしない→少ない利益を確保するのに必死
というのが実態でした。
つまり、会社が掲げている行動指針とはまったく逆のことをやっていたという訳です。
そして、会社はこのプロジェクトの途中であることがきっかけとなり、業況が大きく傾く結果となったのです。
私はこの5ヵ条を社長に教えたと言われる経営者の方にも、何回かお会いしたことがあります。
その方は大手企業の役員をご経験され、今でもいろいろな起業家のご支援をされています。
そして、お話を聞いたり、その行動を見ていると、
言っていることとやっていることが同じ
つまり、
言行一致
なのです。
このため、その方の周りにはいつも教えを乞う人が次から次へと集まってきます。
一方で、私の前職の場合。
残念ながら
言行不一致
でした。
もちろん、行動方針と合わない大型プロジェクトにしても
「この案件をやることで次につながる」
ということで採算はギリギリで、下請け的な仕事だけれど始めたものです。
また、製品の制作過程で当初には予定になかったことまで引き受けてしまったため、結果的には時間を大幅にロスするとともに一時的に多くの在庫を抱えることにもなってしまいました。
その時々は、プロジェクトを成功させるために
「まぁ、仕方ない」
「頑張って乗り切ろう」
と思って一生懸命に取組んでいましたが、冷静になって振り返ってみると
行動指針を逸脱するものばかり
でした。
立派な経営理念を掲げたり、理想的な行動指針を表明している会社はたくさんあります。
でも、それを
いつでもやり続けているかどうか
会社が守るべき一線として徹底されているかどうか
行動指針が表面的な会社はやがて大きな危機を迎えます。
10年前、知人の個人投資家は一瞬でその危機を見抜いていたのかもしれません。
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